【薬剤師が解説】不眠の原因と漢方—タイプ別の改善法

寝つきが悪い・途中で目が覚める…不眠のタイプ別に根本から整える!

こんにちは、Drip & Dose Journalへようこそ!

「ベッドに入ってもなかなか眠れない…」
「夜中に目が覚めてしまい、朝スッキリしない」
「考え事が頭から離れず、リラックスできない」

不眠は、ストレス・生活習慣の乱れ・体の冷え・胃腸の不調などが影響しやすく、原因によって漢方的なアプローチが異なります。東洋医学では、不眠を「血虚・陰虚」「陽虚」「抑うつ」「心神不安」「胃の不調」の5つのタイプに分類し、それぞれに適した漢方処方や養生法を提案しています。

本記事では、不眠の種類ごとの原因と漢方的アプローチで根本改善を目指します


不眠は、ストレス・生活習慣の乱れ・加齢・環境の変化などが影響し、多くの人が経験する症状のひとつです。特に、仕事のプレッシャーやスマホの使用が関係しやすく、悪化すると日常生活に支障をきたすことがあります。

不眠の主な症状

不眠にはさまざまな種類があり、原因によって異なる特徴が現れます。

日本人成人の約20%が慢性的な不眠を抱えている
男性の37.7%、女性の43.0%が睡眠の質に満足していない
睡眠で休養が十分にとれていない人の割合は20.0%
不眠の症状は女性に多く、特に入眠困難のリスクが高い

不眠のタイプによって、漢方処方やセルフケア方法が異なるため、自分の症状をしっかり把握することが大切です。

不眠を引き起こす生活背景

症状の発症には、生活習慣や環境要因が大きく関係しており、以下の要因が不眠を悪化させる原因となります。

1. ストレスと仕事のプレッシャー

仕事のストレスが強いと寝つきが悪くなると感じる人は約40%
職場の人間関係が悪化すると不安感が増し、不眠につながる

2. スマホやデジタル機器の影響

寝る前のスマホ使用が不眠を悪化させると感じる人は約30%
ブルーライトの影響でメラトニンの分泌が抑制され、寝つきが悪くなる

3. 加齢とホルモンバランスの変化

不眠の症状は加齢とともに増加し、特に女性に多くみられる
高齢者は中途覚醒や早朝覚醒のリスクが高い

不眠の予防と生活習慣の改善

不眠を改善するためには、生活習慣を見直し、睡眠の質を向上させることが重要です。

寝る前のスマホ使用を控え、ブルーライトを避ける
ストレスを軽減するためにリラックスできる時間を作る
適度な運動を取り入れ、睡眠の質を向上させる
睡眠環境を整え、快適な寝室を作る
不眠を改善する漢方(酸棗仁湯・帰脾湯・抑肝散)を活用する

また、東洋医学では不眠のタイプ別に漢方処方を活用することで、根本的な改善が可能になります


血虚・陰虚による不眠—興奮して眠れない

特徴

寝ようとしても頭が冴えてしまう
夢をよく見る、眠りが浅い
日頃の生活の乱れが原因で悪化しやすい

症状の特徴

血虚・陰虚の不眠は、精神が高ぶりすぎてリラックスできないため、寝つきが悪くなることが特徴です。特に、日中の過度な活動やストレスが原因となることが多い傾向があります。
夜は陰の時間で、陰いは体を鎮める作用があると考えられます。しかし、夜遅くまで起きているような生活が続くと、心身ともに疲れてしまい、血が消費され陰が足りなくなっていきます。こうなると、体を鎮めることができず、昼間のように、陽である気の働きばかりが高まってしまいます。興奮が冷めず、なかなか寝付けません。交感神経がずっと優位に働いてしまっているような状態です。いったん眠りについても眠りが浅く、夢を多く見たり、すぐに目が覚めてしまったりします。

漢方処方

酸棗仁湯(さんそうにんとう) → 血を補いながら気持ちを鎮める

このタイプの不眠は、「血を補いながら、心を落ち着かせることがポイント」になります。


陽虚による不眠—冷えて眠れない

特徴

体が冷えていて寝つきが悪い
布団の中でも手足が冷たい
朝起きても疲れが取れにくい

症状の特徴

陽虚の不眠は、体を温める力が不足しているため、寝ても熟睡できない状態を指します。特に、冷え性の人や高齢者に多い傾向があります。

漢方処方

八味地黄丸(はちみじおうがん) → 腎陽を補い、体を温める

このタイプの不眠は、「体を温めながら、深い眠りを促すことがポイント」になります。


抑うつによる不眠—イライラして寝付けない

特徴

ストレスが溜まりすぎて眠れない
考え事が多く、脳が興奮している
寝てもすぐ目が覚めることがある

症状の特徴

抑うつによる不眠は、感情の乱れによって肝の働きが高ぶり、気が滞ることで発生します。特に、イライラしやすい人やストレスを溜めやすい人に多い傾向があります。眠りが浅く、夢も多く見ます。目が充血したりもします。

漢方処方

抑肝散(よくかんさん) → 肝の気を巡らせ、精神を落ち着かせる
四逆散(しぎゃくさん) → 肝のたかぶりを鎮める

このタイプの不眠は、「気の巡りを良くしながら、感情のバランスを整えることがポイント」になります。


心神不安による不眠—思い悩んで眠れない

特徴

寝る前にいろいろ考えすぎてしまう
心配事が頭から離れない
眠れてもすぐ目が覚めることがある

症状の特徴

心神不安による不眠は、精神的な緊張が続くことで心が落ち着かず、不眠につながる状態を指します。特に、責任感が強く、考え込む傾向のある人に多い傾向があります。

漢方処方

帰脾湯(きひとう) → 気血を補い、心を安定させる
柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう) → 緊張を和らげ、精神を落ち着かせる
桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう) → 神経過敏を改善し、眠りの質を向上

このタイプの不眠は、「気血を補って心を安定させることがポイント」になります。


胃の不調による不眠—消化不良が原因で眠れない

特徴

食べすぎると眠りが浅くなる
胃の調子が悪いと寝苦しくなる
胸焼けや胃もたれを感じやすい

症状の特徴

胃の不調による不眠は、消化器系の負担によって体のバランスが崩れ、深い眠りが得られない状態を指します。特に、夜遅くに食事をする習慣がある人に多い傾向があります。

漢方処方

安中散(あんちゅうさん) → 胃の働きを整え、眠りの質を改善

このタイプの不眠は、「胃の調子を改善するのがポイント」になります。


不眠を改善する過ごし方

1. 寝る前の環境を整える

室温・湿度を調整し、快適な空間を作る(理想は温度18〜22℃・湿度50〜60%)
ブルーライトを避ける(スマホ・PCの使用は寝る1時間前まで)
寝具の見直し(枕の高さや布団の厚みを調整)

2. 睡眠のリズムを整える

毎日同じ時間に寝る・起きる(生活リズムを一定にする)
朝は日光を浴びて体内時計をリセット
昼寝は長くても30分以内に(長すぎると夜の眠りが浅くなる)

3. リラックスできる時間を持つ

寝る前に軽いストレッチや深呼吸をする
ハーブティー(カモミール・ラベンダー)で気持ちを落ち着かせる
入浴は38〜40℃のぬるめのお湯で15〜20分(交感神経を鎮める)

4. 日中の活動を見直す

適度な運動を習慣にする(ウォーキングやストレッチが◎)
カフェインの摂取は午後3時以降は控えめに
夜は消化に負担の少ない食事を意識する(胃もたれが睡眠の妨げになる)

不眠を改善する食べ物

1. 気持ちを落ち着かせる食材

カモミール・ラベンダー・パッションフラワー(ハーブティーでリラックス)
ナツメ・クコの実(血を補い、不安感を軽減)

2. 体を温める食材

ショウガ・シナモン・黒糖(陽虚による冷えからくる不眠におすすめ)
カボチャ・レンコン・ニンジン(体を温める作用がある)

3. 神経を安定させる食材

バナナ・アーモンド・ナッツ類(トリプトファンが含まれ、メラトニン生成を促進)
豆腐・味噌・納豆(発酵食品で腸内環境を整え、心を落ち着かせる)

4. 胃腸に優しい食材

大根・キャベツ・山芋(胃の負担を軽減)
ヨーグルト・ハトムギ(消化を助け、胃の働きをサポート)

睡眠の質を高めるためには、適切な生活習慣と食生活の調整がカギになります。どれか一つでも取り入れて、快眠へとつなげていきましょう!


次回テーマ:月経トラブルの原因と漢方処方

次回のDrip & Dose Journalでは、「月経トラブル—東洋医学が示すタイプ別の改善法」 をテーマにお届けします。

「生理痛・周期の乱れ・PMS…その原因とは?」
タイプ別の漢方処方
セルフケアと養生法—月経のバランスを整える方法

あなたの不眠はどのタイプ?東洋医学の視点で根本からの改善を目指しましょう!次回もお楽しみに。


【引用元】

  • 睡眠実態調査報告書(全国健康保険協会)
  • 日本の一般成人における不眠症状と性差の関連性(厚生労働科学研究)
  • 睡眠障害の統計(日本生活習慣病予防協会)

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