【薬剤師が解説】便秘の不調と漢方—タイプ別の改善法

慢性的な便秘に悩む方へ—東洋医学で根本からのケアを!

こんにちは、Drip & Dose Journalへようこそ!

「便秘が続いて、お腹が張って苦しい」
「冷えや乾燥が影響しているのか、便がスムーズに出ない」
「ストレスが溜まると腸の動きが悪くなる気がする」

便秘は、食生活・体質・ストレスなどが影響する症状であり、慢性化すると腸内環境の乱れや肌荒れ、全身の不調につながることがあります。東洋医学では、便秘を「陽虚」「陰虚」「瘀血」の3つのタイプに分類し、それぞれに適した漢方処方や養生法を提案しています。

本記事では、便秘の種類ごとの原因と漢方的アプローチで根本改善を目指します


便秘の主な症状

便秘にはさまざまな症状があり、原因によって異なる特徴が現れます。

排便回数の減少週3回未満の排便頻度が便秘の指標とされる
硬い便・排便困難便秘自覚者の約1/3が硬便を経験し、排便時の痛みを伴う
腹部膨満感・ガス溜まり便秘患者の多くが「お腹が張る」と感じる
残便感排便後もすっきりしないと感じる人が約27.1%

便秘は、腸の働きが悪くなることで慢性化しやすく、生活の質(QOL)にも影響を与えるため、適切な対策が必要です。

便秘を引き起こす生活背景

症状の発症には、生活習慣や環境要因が大きく関係しており、以下の要因が便秘を悪化させる原因となります。

1. 食生活の乱れ

食物繊維不足の食生活日本人の約30%が「食物繊維不足が便秘の原因」と認識
水分不足による腸の動きの低下約25%が「水分を十分に摂らないと便秘になる」と経験
脂っこい食事や加工食品の過剰摂取腸内環境の悪化を招き、便秘を慢性化させる

食生活の乱れは、腸の負担を増やし、消化機能を低下させるため、バランスの取れた食事が重要です。

2. 運動不足

長時間座る生活による腸の活動低下約35%が「運動不足が便秘の原因」と認識
適度な運動をしている人は便秘の発症率が約30%減少

運動不足によって腸の動きが鈍くなるため、適度な運動を取り入れることが重要です。

3. ストレスと自律神経の乱れ

ストレスが強い人の約40%が便秘を経験
精神的な緊張が続くと腸の働きが乱れ、便秘を引き起こす人が約25%

ストレスが原因の便秘は、リラックス時間を増やすことで改善しやすくなります

4. 加齢による影響

50歳以上の約40%が慢性的な便秘を抱えている
加齢とともに腸の働きが低下し、便秘の発症率が上昇

加齢とともに腸の働きが弱まるため、適切な食事管理と生活習慣の見直しが必要です。

便秘の予防と生活習慣の改善

便秘を改善するためには、生活習慣を見直し、腸の働きを整えることが重要です。

適度な運動(ストレッチ・ウォーキング)を取り入れる
長時間のストレスを避け、リラックスする時間を確保する
水分を意識的に摂取する(1日1.5~2Lが目安)
食物繊維を豊富に含む食材(野菜・海藻・豆類)を積極的に摂る
腸内環境を整える発酵食品(ヨーグルト・納豆・味噌)を取り入れる

また、東洋医学では便秘のタイプ別に漢方処方を活用することで、根本的な改善が可能になります


陽虚による便秘—冷えによって腸の巡りが悪くなる

特徴

お腹が冷えやすく、腸の動きが鈍い
寒い環境で便秘が悪化しやすい
ガスが溜まりやすく、膨満感を感じる

症状の特徴

陽虚の人は、腸を温める力が弱く、冷えによって腸の動きが鈍くなることが特徴です。特に冬場や冷房の効いた環境で便秘が悪化しやすいため、腸をしっかり温めることが重要です。市販の便秘薬を飲むとお腹が痛くなったり下痢をしてしまう人は、漢方薬での治療が有効です。

漢方処方

大建中湯(だいけんちゅうとう) → お腹を温めて腸を活性化する
※下剤が入っていないため、お腹の痛みをゆるやかに改善します。ただし、頑固な便秘には、効き目が弱い処方です。

このタイプの便秘は、「腸を温めながら動きを活発にする」ことがポイントになります。


陰虚による便秘—乾燥によって便が出にくい

特徴

尿の回数は多いが、便は出づらい
便が硬く、乾燥しやすい
肌の乾燥や喉の渇きを感じることが多い
食欲旺盛の人や高齢者に多い

症状の特徴

陰虚による便秘は、体の水分不足が影響し、便が乾燥して排出しにくくなることが特徴です。特に、夜間の尿が多く、便はなかなか出ないと感じる傾向があります。

漢方処方

麻子仁丸(ましにんがん) → 腸の水分バランスを整え、便を柔らかくする

このタイプの便秘は、「体の潤いを補いながら腸の動きを改善する」ことがポイントになります。


瘀血による便秘—体質によって発生する頑固な便秘

特徴

排便が困難で、腹痛を伴うことがある
便秘が慢性化し、頑固に続く
ストレスや疲労が影響しやすい

症状の特徴

瘀血による便秘は、血流の滞りが原因で腸の働きが悪くなることが特徴です。特に長期間便秘が続いている場合は、腸内の巡りを改善する必要があります

漢方処方

桃核承気湯(とうかくじょうきとう) → 強めの処方で、腸の働きを刺激し、滞った便を排出

このタイプの便秘は、「腸の巡りを改善しながら、血流を促進する」ことがポイントになります。


+α:痔の改善には乙字湯

便秘が続くと、排便時に肛門への負担が増え、痔を悪化させることがあります。特に瘀血タイプの便秘では痔が発生しやすいため、乙字湯(おつじとう)が有効です。

肛門のうっ血を改善し、排便をスムーズにする
炎症を抑え、痔の痛みを緩和

痔に悩んでいる方は、便秘改善と同時に痔の対策も進めることが大切です。


養生・セルフケアのポイント

1. 過ごし方

お腹を温める(特に陽虚タイプ)
水分を意識的に摂取する(特に陰虚タイプ)
ストレス管理を意識し、リラックスする時間を確保

2. 食べ物

腸を温める食材(生姜、シナモン、黒糖)は陽虚タイプ向け
便を柔らかくする食材(ナツメ、黒豆、ごま)は陰虚タイプ向け
腸の巡りを改善する食材(シソ、陳皮、生姜)は瘀血タイプ向け


次回テーマ:肌荒れの原因と漢方処方

次回のDrip & Dose Journalでは、「肌荒れ—東洋医学が示すタイプ別の改善法」 をテーマにお届けします。

「乾燥・脂っぽさ・くすみ…肌荒れの原因とは?」
タイプ別の漢方処方
セルフケアと養生法—美肌を育てる方法

あなたの肌荒れはどのタイプ?東洋医学の視点で根本からの改善を目指しましょう!次回もお楽しみに。


【引用元】

  • 日本消化器病学会雑誌 – 便秘に関する実態調査
  • 国民生活基礎調査 – 政府統計
  • 大人の排便に関する意識調査 – 日本トイレ研究所

【キーワード】

  • 「便秘 漢方」
  • 「大建中湯 便秘 冷え」
  • 「麻子仁丸 便秘 乾燥」
  • 「桃核承気湯 頑固な便秘 改善」
  • 「漢方で便秘を予防する」
最新情報をチェックしよう!